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ただ一つの一対
第6章 夢の終わり
「醜いですね。体は痣だらけで、精にまみれた匂いも鼻につきます」
則宗が最も嫌うその青年は、則宗が足掻いても手に入れられなかった女――菊の母親にそっくりな顔立ちをしている。だからこそなおさら菊を憎むのだろうと、美和子はぼんやりと考えた。
「今日は、若がお相手ですか? 構いませんよ、準備は出来ていますから、前からでも後ろからでもどうぞ」
「そんなくだらない用事ではありません。大体、どこの誰に抱かれたかも分からない女を抱いて、病気を移されても困ります」
わざわざ夜にやってきたのだ、目当ては体だと思ったが、菊は違った。ディルドを抜き、体を縛る縄を解くと、美和子へバスローブを渡したのだ。
「なんのつもりです?」
「この前の島田との取引を成立させたのは、あなたですね。あなたはたびたびあの無能に無茶を要求されながら、それらを全てこなしている。親権は前妻のものとはいえ、あなたは左月の血を色濃く引き継いだのでしょう」
美和子はひとまずバスローブを身につけると、柱に寄りかかって立つ。
「私の力が必要ですか? しかし、私は則宗派の人間ですよ。手駒にしても、信用ならないでしょう」