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ただ一つの一対
第7章 彼女の優しさ
「皆勤賞を狙っているなら諦めますが、一日くらい休んでも損はしませんよ。なんでしたら、僕が勉強を見てもいいです」
「いいの? だって今までは、学校サボっちゃ駄目だって……」
「菖蒲が嫌なら、我慢しますよ」
菊が肩を落とし悲しがる素振りを見せれば、菖蒲は慌てて首を振る。
「嫌じゃない! 行く、前の日は全部叔父さんのために空けとく!」
「そうですか、それならよかった。では菖蒲、どこか行きたいところはありますか? せっかくですから、どこかデートに行きましょう」
デートという言葉の響きに、菖蒲は目を輝かせ頬を染める。その素直な反応に、菊はつい甘やかしてしまう。
「望むなら、遊園地でも貸し切りましょうか。ああ、でも寒いですから、室内の方がいいですか? 時期は早いですが、遠出すればスキーも……」
「うーん……あ、そういえばこの前、この近くの動物園で、ライオンの赤ちゃんが生まれたって聞いたよ。そことかどうかな?」
だが今まで笑みを浮かべていた菊は、それを聞いたとたん固まってしまう。そして眉を下げると、申し訳なさそうに打ち明けた。