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ただ一つの一対
第7章 彼女の優しさ
「……叔父さんは、どうして動物が汚いって思うの? それ、見た目とかじゃないよね。叔父さんは、見た目で差別するような人じゃないもん」
大人なら、気を遣い踏み込まずに取り繕うのかもしれない。そう分かっていても、菖蒲は聞かずにはいられなかった。今度は菊が目を丸くするが、菖蒲は菊から視線を外さなかった。
「僕とした事が、大ざっぱな説明でしたね。動物って、情ではなく立場で相手を見るでしょう? 例えば猿山なんかいい見本ですね、上か下かで露骨に態度を変えるのが嫌いなんです」
「うーん、確かに、昔うちで飼ってた犬も家に来てすぐの頃は、お母さんには懐いたのに、お父さんは馬鹿にしてたなぁ」
「それが野生の本能である事は理解しますが、相手の本質を見ずに虐げる姿を、美しいとは思えないんです。汚い人間の集まりを見ているようで、動物は苦手なんですよ」
「そっか……そう考えると、確かに苦手でもしょうがないね」
「魚はどちらかと言えば食べ物ですから、命をいただく事に感謝しなくてはいけません。食べ物に文句をつけるのは醜いですし、気にしないのですが」