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ただ一つの一対
第7章 彼女の優しさ
「……そっか。それなら、いいんだけど」
「それより今は、もっとあなたと触れ合っていたいです。まさか、もう疲れたとは言わないでしょう? 僕はまだ、臨戦態勢のままですよ」
胸に溜まる思いを快楽で押し流そうと、菊は菖蒲の胸を揉み始める。だが気持ちを誤魔化したい一心で、菊はまだ気付いていない。菊がこの場を誤魔化せた訳ではなく、菖蒲が誤魔化された振りをしているだけなのだと。そして本当に誤魔化されたのは、本音をかわされた悲しみである事を。
「叔父さん……もっと、めちゃめちゃにして。全部、忘れちゃうくらいに」
菖蒲の積極的な言葉にまんまと引っかかり、菊は愛撫を激しくする。理性を溶かし、しがらみから解放されるための手段となった交わりの先にあるものを、まだ菊は見えていなかった。
12月17日、それが菊の生まれた日である。その前日である16日に、菖蒲は初めて学校をズル休みし、菊の元へと向かった。
うやむやになったままのデートの行き先。菖蒲は何も聞かされず車に乗せられ運ばれる。そして着いた先の看板を見て、言葉を失ってしまった。