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ただ一つの一対
第7章 彼女の優しさ
 
 素朴な木の看板には、『うさぎカフェ』と書かれている。菊からはかけ離れたイメージに目を丸くしていると、菊はにこやかに話す。

「菖蒲、小さい頃からうさぎが好きだったでしょう? それに、向き合って分かり合うなら、触れ合える場所の方が適していると思いまして」

「それって、あたしがこの前言ったから?」

「菖蒲と一緒なら、苦手も克服出来そうですから」

 菖蒲は喜びを隠せず、つい口元を緩ませてしまう。菊の腕に抱きつくと引っ張り、カフェへの扉を開いた。

 手続きや消毒を終えて中に入ると、迎えてくれるうさぎ。菖蒲は黄色い声を上げたいのを我慢して、そっとうさぎを膝の上に乗せる。

「叔父さん、うさぎ可愛い、もふもふだよ」

「そうですか、それはなによりです」

「叔父さんも触ってみて、絶対好きになるから」

 すると菊は菖蒲の頭を撫で、顔を覗き込む。

「ええ、可愛くて夢中になりますね。触れるたびに好きになります」

「……あたしじゃなくて、うさぎだって」

「今度バニーガールのコスプレでもしてみますか? 似合うと思いますよ」
 
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