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ただ一つの一対
第7章 彼女の優しさ
「叔父さん、コスプレとかそういうの好きなの?」
「いえ、特には。でも菖蒲が着るなら、葉っぱ一枚からドレスまで、なんでも可愛いと思いますよ」
「葉っぱ一枚は、あたしがヤだよ……」
否定はしてみるものの、あまりにストレートな褒め言葉に、菖蒲ははにかむ。結局終始こんなやりとりが続き、時間が迫っても、菊の苦手が克服できたかどうかは定かでなかった。
菊とのデートは、その後も菖蒲の好みそうな場所へと次々に連れて行かれる。菖蒲が菊の誕生日祝いなのにそれでいいのかと訊ねても、菊は満足げに頷く。心から楽しんでいる姿を見れば、菖蒲もそれを信じるしかなかった。
そして、夜。初めて二人が繋がったホテルの部屋で、二人は甘い時間を過ごす。精が果てるまで抱き合った後、刻々と迫る明日を確認すると、菖蒲は不意に立ち上がった。
「どうしました、菖蒲?」
「うん、ちょっと待ってて」
菖蒲は荷物を持ち、備え付けのバスルームまで引っ込む。そして戻ってくると、なぜかバスローブから、昼に着ていた洋服へと着替えていた。
「どこか行きたいところでもあるんですか? あまり遅くに出歩くのは、感心しませんが……」