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ただ一つの一対
第7章 彼女の優しさ
 
「ごめんなさい、叔父さん。あたし、今日で叔父さんの恋人は終わりにするよ」

 幸せの絶頂から聞かされた言葉に、菊は全身から血が引く。言葉を理解するまでに、数秒の時を要した。

「――――急に、どうして。僕が……何か、不愉快な事をしましたか? でしたら、謝りますから」

「ううん、叔父さんに何か問題がある訳じゃないの。むしろ逆。あたし、この数ヶ月、人生で最高に幸せだったよ」

「それなら、なぜ!? 僕はあなたと別れるなんて、絶対に嫌ですからね!」

 菊は菖蒲の肩を掴み、声を荒げる。うつむいた菖蒲の頬からは、涙が伝っていた。

「あたしだって、別れるなんて嫌だよ。こうやって顔を合わせて話すたびに、あたしどんどん叔父さんが好きになってくの。でも……だから、別れなきゃいけない」

「意味が分かりません。想いが一致しているなら、なぜわざわざ離れなければならないんですか」

「だって叔父さん、ずっと罪悪感抱えてるでしょ?」

 菖蒲の指摘に、菊は言葉を失う。そんな事はないと取り繕う余裕など、別れ話で動揺した菊には不可能だった。
 
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