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ただ一つの一対
第7章 彼女の優しさ

「それで坊ちゃん、打ち合わせとは?」
「ああ、明日のクリスマスについてです。子ども達に配るプレゼントなんですが、僕の派閥からは西川と佐藤が――」
ここ数日、菊は寝る間も惜しんで仕事に打ち込んでいる。年末年始に向けて山ほど仕事があるのも事実だが、菊がのめり込むのは間違いなく現実逃避だ。下手に口は出さないと決めたものの、左月は一言だけ言わずにはいられなかった。
「坊ちゃん」
「……なんですか、もう雑談の時間は終わりですよ」
「雑談じゃありません。これから行事が続く中、坊ちゃんが倒れでもしたら、組長の思う壺です。どうか、組のためにも体調だけは整えてください」
「分かっています。無能を蔓延らせるような真似はしませんよ」
そうは言っても、菊に休もうとする様子は見受けられない。結局クリスマスイブの当日まで、菊がまともにベッドで眠る事はなかった。
そして、当日の夜。現組長である則宗がイベント好きである事もあり、盛大なパーティーが一文字組では開かれていた。毎日殺伐とした組員達も、慰労に感謝し笑顔を見せる。いけ好かない相手ではあるが、菊はその人身掌握術を横目で盗み、シャンパンに口をつけた。

