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ただ一つの一対
第7章 彼女の優しさ

「若、今日は一段とお美しいお召し物ですね」
菊にしなだれかかってきたのは、黒いドレスに身を包み、色香を漂わせる片倉だった。
「褒めるのは服だけですか」
「中身は今にも折れてしまいそうな虚弱ですから。そんな顔色でアルコールを口にしたら、冗談抜きで倒れてしまいますよ?」
「全く、相変わらずあなたは口の減らない女ですね」
「女というものは皆そうです。頭の中身が未だに中学生の若には理解出来ないでしょうけれど」
「まだこの前の口論を根に持っているのですか?」
「当たり前です。若に会えない女達を宥めたのは、誰だと思っているんです」
片倉は菊のシャンパンを奪うと、それを一気に飲み干す。そして片倉が腕を絡めてきても、菊はばつが悪く振り払えなかった。
「年が明けたら、今まで通り働きますよ。どうせ僕は、組を円滑に回す種馬なんですから」
「そうしてくださると助かります。あなたは未来の組長なんです、誰か一人のものにはなれないんですから」
「そんな事望んでもいないくせに、白々しい」
「白々しい演技も、たまには必要でしょう? 拗ねた男を慰めるには、おだてるのが一番です」

