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ただ一つの一対
第7章 彼女の優しさ

言えば言うほど返ってくる嫌味に、菊は溜め息を漏らす。諦めて黙っていると、さらに溜め息を増やす相手が菊の元へと歩いてきた。
「おう、相変わらず年増を引き連れてんだなぁ、菊」
「……組長」
若い衆を両脇に引き連れて現れたのは、則宗。菊は眉を顰めながらも、深々とお辞儀した。
「今日はめでてぇ日なんだ、そうかしこまんな。こんな時に水差すような真似はしねぇよ」
「えぇ、楽しませていただいています。今年は近年一番の盛り上がりで、ますます繁栄する一文字組の姿が見えるようです」
「それを主導したのは俺だって忘れんなよ。お前にはまだまだ早いんだからな」
「その資金を捻出しているのは誰なのか、すっかりお忘れのようで。企画を考えるだけで実現は出来ないんですよ」
水を差すような真似はしないと言いながら、二人の間には火花が走る。間に入りそれを止めたのは、片倉だった。
「それで、組長。こちらへいらっしゃったという事は、何か不具合でもありましたか? 特に問題は見受けられませんが」
「ああ……いや、問題はねぇよ。ただな、菊。お前ちょっと、顔色が悪いんじゃねぇのか?」

