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ただ一つの一対
第7章 彼女の優しさ
「組長、本当によろしいんですか? いっそ倒れて入院させた方が……」
「俺だって知らねぇよ。美和子がそうしろって言うんだからよ」
「美和子って……あいつが?」
「パーティーが一段落したら、菊を自宅に帰すよう指示しろってよ。それだけすれば、なんか面白い事をしてやるってさ」
「あの女、信用出来るんですか? 結局あいつは、菊の女なんでしょう?」
「若いお前は知らねぇだろうが、あいつは俺を裏切りなんか出来ねぇよ。誰が飼い主で誰がペットか、体に染み着いてるからな」
則宗が余裕の笑みを浮かべれば、何も知らない若い衆は口出しも出来なくなる。誰を信用しているかも分からない片倉に、後を任せるしかなかった。
本家ではなくマンションに戻った菊を寝かせ、片倉は熱を計る。体温計は、38度を軽々と越えていた。
「若……これでは、則宗様が心配されるのも当然です。死にたくないなら、大人しく寝ていてください」
「片倉、明日は大雪になるでしょうから、毛布をもう一枚ください。あの無能の頭が病気でないなら、きっと天変地異の前触れです」