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ただ一つの一対
第8章 聖夜の狂乱
 
「こんなにあなたが愛しいのに、なにもしないで寝る方が毒です。今僕が元気だったら、もうとっくに襲ってますよ」

「ホントに無理そうなら言ってね? 今日は、あたしが頑張るから」

 菊の素肌を撫でながら、菖蒲は体を倒す。鎖骨に口付け吸い付けば、赤い跡がついた。

「思わぬクリスマスプレゼントですね。積極的な菖蒲、たくさん見せてください」

 下から胸を揉みながら、楽しそうに菊が呟く。与えられる快感に吐息を漏らしながら、菖蒲は菊の首筋に舌を這わせた。

 が、甘い空気を壊すように、ドアを開く音が響く。一人暮らしである菊の部屋に、今誰かが入ってくる可能性は限りなく低い。二人が緊張し身を強張らせたその時、静かに入ってきた人物。目が合った瞬間、空気が凍った。

「――お兄、様」

 肌を晒し横になった菊に跨がり、身を寄せる菖蒲。現れた宗一郎は、目を見開くと鬼の形相へと変わる。

「――菊、貴様ぁーっ!!」

 宗一郎は菖蒲を突き飛ばすと、菊の首を掴んで押さえつけ、拳を振り上げる。

「お父さんっ!!」

「俺が憎いなら、俺を殺せばいいだろうっ!! いくらお前でも、こんな真似……っ!」
 
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