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ただ一つの一対
第8章 聖夜の狂乱
「なぜ菖蒲が、僕の部屋に真夜中に現れたのか。そしてお兄様が後を追ったのか。二人へ情報を流し、なおかつ部屋の鍵を開けられる人間は、あなた一人しかいません」
菖蒲が苦痛に悶える姿を思い出せば、菊は片倉を蹴り飛ばさずにはいられなかった。転がり、仰向けになった片倉の胸ぐらを掴むと、人ではない冷たい目線を片倉にぶつける。
「ずさんなやり口に、一般人を巻き込む醜悪な手。あなたには失望しました、もう少し賢い女だと思っていましたが」
すると片倉は、くつくつと笑い出し菊の頬に手を伸ばした。
「ふっ……ふふふ、あなたこそ、私を失望させてくれたじゃありませんか。腑抜けて無様な面を晒して、私がどれだけ苛ついたかも知らないで」
「あなたの感情など知った事ではありません。前にも言いましたね、二度はないと。醜い人間は、必要ありません」
菊は片倉へ馬乗りになると、首に手を掛ける。だが片倉はそれが締まる前に、スカートの裾から小型の拳銃を取り出す。
菊が身を翻す間もなく、肩を貫く銃弾。片倉は怯んだ菊を逆に押し倒すと、額に銃口を押し付けた。