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ただ一つの一対
第8章 聖夜の狂乱
「懐かしいですね、若。泣いてばかりだった子どもが、こんなにも立派になって」
片倉は膝を菊の陰茎に押し付け、ぐりぐりと捻る。菊が顔を歪めればますます笑みを深め、耳元で囁いた。
「若が死んだらここを切り取って、私の中へ埋め込み縫いつけてやりますからご安心を。血も肉も、全て無駄にはいたしません」
「ですが、今僕を殺してあなたに何が残るんです? 復讐は果たせても、あなたの命もありませんよ」
若頭を殺されたとなれば、いくら則宗が菊を嫌おうと、面子のために犯人を逃がす訳にはいかない。もちろん菊派の部下なら、弔い合戦だと息まくだろう。ずさんなやり方で、逃げきれるとは考えられなかった。
「若には、理解できないでしょうね。私は、命なんてもうどうでもいいんです」
「死してなお復讐に走る必要がどこにあったんです。生きながら復讐を果たす機会など、あなたならいくらでも作れるでしょうに」
「そうやって、また私を操ろうとするのですね。馬鹿な人……あなたは完璧です。でも、だから私を鬼にしてしまった。全部、あなたが悪いんです」