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ただ一つの一対
第8章 聖夜の狂乱
「俺は――俺が、悪いんじゃない! 美和子は、俺とだけじゃない、親父とも寝ていたんだ! そんな汚い女と、一緒に逃げる奴がどこにいる!!」
「そんなもの、あの外道が脅して始まった関係に決まっているでしょう。馬鹿でも分かります、合意のはずがない。恋人ならば、なおさら救わねばと固く誓うのが倫理なのではないですか?」
「うるさいっ!! 俺の何が悪い、ただ俺は、平凡でもまともな人間になりたかっただけだ! そんな小さくてなんでもない願いすら、俺には許されないのか!」
「ええ、許されませんよ。己の欲した女一人すら守れないほど弱いくせに、正義と権利だけ語る、僕はそんな醜い人間を見ると虫酸が走る!!」
菊が壁を拳で叩けば、宗一郎は身を震わせ言葉を失う。
「同じ腹から生まれた子どもを身代わりに使うような母も、現実をいつまでも受け止められない父も、自分のためなら何を犠牲にしても当然と思うあなたも、全てが醜くて反吐が出る! ずっと僕が復讐すると思っていたのでしょう!? その原因を作ったのは自分だという事実を棚に上げて、人を見下して!」