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ただ一つの一対
第9章 ただ一つの一対
「僕は、初めからあまり世間体を気にするような環境の人間ではありません。ですが、あなたが僕の素性を知り、離れようと思っても止める権利はありません。付き合っていくならいつまでも隠し立ては出来ませんが、あなたを失いたくなくて、何も話さず誤魔化したんです」
「叔父さん……」
「ですが、もう悩むのはやめにしました。あなたの未来のために身を引くなんて不可能だと、今回離れてよーく分かりました。もう僕は、菖蒲のいない人生なんて考えられないんです」
菊は身を起こし、菖蒲に唇を重ねる。労るような優しいキスは菖蒲の琴線に触れ、高鳴る鼓動と共に曲を奏でた。
「もう、お兄様の元へは帰しません。あなたから平凡な日常を全て奪う形にはなりますが、許してください。あなたは、僕が探し求めた、ただ一つの一対です。あなたを……愛しています」
舌と共に、繋いだ手も強く握られ、指が絡む。菊の手は、けっして真っ白なものではない。だが法や倫理が許さずとも、胎が叫ぶ。この手が、変えられぬ一対だと。
「あたし……他の全部を捨てても、叔父さんと一緒になりたい。あたしも、たとえ何者だって、叔父さんが好きなの……」