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ただ一つの一対
第1章 失恋した男
だが菖蒲の意図に反し、菊はコーヒーを吹き出しそうになり咳き込む。
「お、叔父さん!? 大丈夫!?」
「あなたは、なんて事を言うんですか! 慰めるだなんて、そんな事どこで覚えて……」
「どこって……皆普通にそれくらいするでしょ? 叔父さんだって、よくあたしを慰めてくれるじゃない」
菊がなぜ声を荒げ動揺するのか分からず、菖蒲は眉をしかめる。そして菖蒲の言葉でようやく落ち着いた菊は、長い溜め息を吐いて頭を抱えた。
「ああ、そういう意味ですか……すみません、言葉の意味を少々取り違えていたようです」
「取り違え?」
「気にしないでください、菖蒲の気持ちはよく分かりました。では今日は、お言葉に甘えて慰めてもらいましょう」
再び余裕を取り戻した菊に、今度は菖蒲がたじろぐ。慰める、とは言ってみたものの、自分より年上の身内をどう慰めたらいいかなど検討もつかなかったのだ。だが菊は、椅子に深く腰掛け菖蒲の言葉を待っている。
「えっと……その」
ふんわりと当たる視線に、心臓が騒ぐ。菖蒲は自分の頬に熱が集まるのを感じ、慌てて両手で押さえて隠した。