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ただ一つの一対
第9章 ただ一つの一対

「でも……」
「自分が身を引いても、相手が幸せになれるならそれでいい。姫様だって、そう思ったから若から離れたのでしょう?」
片倉が冷静で大人の対応を取れば取るほど、菖蒲は胸が重くなる。確かに菖蒲も同じ事を思って身を引いたが、結局耐えきれずに菊の元へ向かっているのだ。
「あたしより……片倉さんの方が、叔父さんにはふさわしいです。あたし、本当に身勝手で」
「姫様、それ以上言うと怒りますよ」
菖蒲をたしなめる口調すら、片倉と菊はそっくりである。ますます沈めば、片倉は苦笑いを浮かべた。
「私は……姫様が羨ましいです。他の誰がふさわしいと思ったって、若の心を射止めたのは姫様なのですから。いくら周りに認められても、本人に愛されなければ意味がありません。若は姫様がいなければ死にかけるほど、姫様を愛しているんです。それ以上の幸福が、他にありますか?」
「それは……そうだけど」
「姫様は、自分から一歩を踏み出してその地位を勝ち取ったんです。他の誰が横恋慕しても、姫様は遠慮してはいけません。若が姫様を求める限り、その手を掴まなければ」

