この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ一つの一対
第2章 少女は夢を見る
力強く竹刀を握る菖蒲は、凛としている。菊は菖蒲の頭から手を離すと、まじまじと菖蒲を見つめた。
「ええ、菖蒲が一番美しく輝くのは、剣を手に取ったその時です。その真っ直ぐな瞳を見れば、お兄様も理解してくれるでしょう」
すると菖蒲の頬はたちまち桜色に染まり、真っ直ぐだった瞳は揺れる。
「う、美しいとか、叔父さんは大げさだよ! そういう事簡単に言うから、無駄にモテるんだからね!」
「簡単には言いませんよ? 美しいモノは希少だからこそ、価値があるんです」
「だから、もう……叔父さんは、分かってるようで分かってない!」
声を荒げる菖蒲の意図が分からず、菊は首を傾げた。すると道場主が大笑いして菊の肩を叩き、頬を指でつついた。
「憎いねぇ、色男は。姪っ子に手ぇ出しちゃ駄目だよ」
「言われなくとも、手を出すつもりなんてありませんが?」
菊は、なぜそんな事を言われるのか分からないと言いたげに、首を傾げる。そして同時にポロリとこぼした言葉で、今までうろたえていた菖蒲が肩を落とした。
「……分かってるもん、そんなの」