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ただ一つの一対
第2章 少女は夢を見る
「あ、やべ……まったく、菊君は女心に疎いねぇ。仕事ばっかりしてるから駄目なんだよ。なんだったら今日の夜、綺麗なお姉ちゃんがいるお店にでも」
「申し訳ありませんが、それはお断りします」
「相も変わらずお堅いねぇ! よかったなぁ姫、叔父さんは、可愛い姪っ子が心配だから、一日中べったりしていたいってさ」
慌てて取り繕う苦労を知らないのは菊だけ。菖蒲は道場主の明るさに、萎む事なく花を開かせた。
剣道の練習は、昼まで続く。煩悩を払い、汗を流し、体の内に宿るのは、心地良い疲労と充実。しがらみのない時間は、光のように過ぎていった。
マンションへ戻り二人が目にしたのは、夜の残り香を残したまま、ソファに横たわって眠る片倉の姿だった。バスタオルははだけて尻が露わになり、胸も先端がこぼれている。
「お、叔父さん見ちゃダメ! 今毛布か何か持ってくるから!」
菖蒲は慌てて菊に背を向けさせると、寝室から薄手の毛布を持ってくる。そしてそれを片倉に掛けると、安堵の溜め息をついた。
「起こしてしまえばよかったのではないですか?」