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ただ一つの一対
第2章 少女は夢を見る
「駄目だよ叔父さん。だって片倉さんって、叔父さんの秘書なんでしょ? それって、普段は叔父さんと同じくらい忙しいって事でしょ?」
「まあ……そうですね」
「叔父さんは男だし、体力もあるだろうけど、片倉さんは女の人だよ。疲れてるだろうし、ちょっとくらい休ませてあげようよ」
菖蒲は、大人の事情に口を挟むのは差し出がましいと思っているのか、遠慮がちな声で訴える。が、言葉に迷いはない。
「……そうですね。菖蒲の料理の手伝いは、あくまでプライベートです。仕事でないなら、無理に起こす必要はありませんね」
菊は占拠されたソファの向かいに座ると、菖蒲にぺこりと頭を下げる。
「では菖蒲、今日の料理は一人で頑張ってくださいね」
「う……」
自分から言い出した手前、今さら片倉を叩き起こす訳にはいかない。しかし菖蒲がこれから料理を作る相手は、自分より遥かに腕前のいい男だ。朝の話を思い出せば、菊に手伝いを求める訳にもいかない。菖蒲は人差し指をもじもじと動かしながら、菊に訊ねた。
「失敗しても、怒らない……?」