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ただ一つの一対
第3章 ただ一つの欠陥
「――っ!」
だが、女の内は細い指一本でも許さない。鈍い痛みは、熱に浮かされた頭を叩いた。
(指一本でもこんなに痛いのに、人のを入れるなんて出来るのかな。ちょっと、怖いかも……)
菖蒲にはまだ、痛みを超えて突き破る勇気がなかった。指を引き抜くと体を起こし、菊の服を畳み乱した布団も直す。
「う……」
そうしている間も、濡れた下着に不快感を覚える。とりあえず汚れた下半身を拭い着替えようと、菖蒲はトイレへ向かった。
乱れた記憶を封印するかのように、汚れた下着を奥にしまい込んだ時、家のインターホンが鳴る。現れたのは、菊の部下である成実だった。
「お久しぶりッス、姫様!」
「お久し振りです……あの、片倉さんもそうですけど、その姫様って呼び方止めません? 叔父さんは皆『若』だし、なんか時代劇の人間みたいで」
「姫様は若の大事な姫様ッスから、それは変えられないッスね。さて、立ち話もなんですから、まずは中に入りましょう」
成実は中に入ると、自分でお茶を淹れてソファに座る。そして菖蒲の目の色を見ると、お茶を差し出しながら訊ねた。