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ただ一つの一対
第3章 ただ一つの欠陥
「姫様、若と何かありました? 目が赤いッス。さっきまで、泣いていたんじゃないッスか?」
なんの悪気もない質問だが、菖蒲は先程まで耽っていた行為を思い出して顔を真っ赤にしてしまう。だが沈黙を肯定と受け取った成実は、一口お茶を啜るとしみじみ語った。
「若は気が利くようで、人の気持ちにいま一つ鈍い人ですからね。天才だからこそ、若は凡人の世界が分からないんスよ。悩む気持ち、分かるッス」
「成実さんも、叔父さんの事で悩んだりするんですか?」
「そりゃ悩むッスよ! たとえば、何をすれば若の支えになるか、とか。若は大抵何でも出来ちゃいますから、下手に手出しすると逆に足手まといになるんス。けれど何も手伝わなきゃ、側に置いてもらう意味もないでしょ?」
大げさに唸る成実は、菖蒲と同じような悩みを打ち明ける。自分だけが悩んでいるのではないと安堵する気持ちは、涙を誘う。
「ちょ、姫様!? 泣かないで、元気出すッスよ!」
「ごめ、ごめんなさい……でもあたし、どうしたらいいのか分かんなくて……」
「聞くッス! 何時間でも悩み相談聞くッスから!」