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ただ一つの一対
第4章 花園への道
「若、成実の小僧が心配していましたよ。体調管理も大人の仕事です、少し休んではいかがですか」
「ああ、左月。ちょうど良かった、片倉を呼んできてくれませんか?」
忠告を無視し、菊はパソコンのキーボードを叩き続ける。左月は溜め息をこぼすと、菊の肩を掴み無理やり振り向かせた。
「坊ちゃん、美和子……いえ、片倉について、話があります」
「僕は忙しいんです、手短にお願いします」
「先日の取引についてもそうですが、たびたび組長は坊ちゃんの妨害に成功しています。これは、誰かが情報を横流ししているからでしょう」
「片倉が、あの無能と繋がっていると?」
菊は軽く肩をすくめると、またパソコンに向かい直す。そして無表情のまま、さらりと言い切った。
「そうでしょうね。特に先日の妨害は、片倉でなければ知り得ない情報が含まれていました。彼女が流しているんでしょう」
「では、なぜ放置するのですか。私に気を遣っているのなら、やめてください。あれは確かに私と前妻の間に生まれた娘ですが、若に害を成すなら処分されて然るべきです」
「別に、彼女の出自やあなたへの配慮で行動を決めている訳ではありません」