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ただ一つの一対
第4章 花園への道

強くなったと証明する。そう宣言した菖蒲に、嘘はなかった。菊により強敵と当たるよう操作されたトーナメントを、菖蒲は勝ち進んでいく。
誰にも打ち負けず、途中で息切れする事もなく、まっすぐ突き進む姿に、菊は胸が熱くなる。それは宗一郎も同じだったようで、決勝戦、三つの旗が上がった瞬間は、思わず二人は手を合わせ菖蒲の勝利を祝福していた。
「お父さん、お母さん、それに叔父さんも、応援ありがとう。見てこれ、優勝してきたよ!」
試合後、トロフィーを手に真っ白な剣道着のまま駆けつけてきた菖蒲。菊より早く、宗一郎は菖蒲の頭を撫でると破顔した。
「流石は俺の娘だ! よくやった、ようやく勝てたんだな」
父や母に囲まれ笑う菖蒲に、菊は一歩離れて様子を窺う。菖蒲は普段父の文句をよくこぼすが、結局は仲がいいのだ。そこへ手を伸ばし場を壊すなど、菊にはとても出来なかった。
菊は自分の手を見つめ、自嘲めいた笑みを浮かべる。その場の勢いで馴染んだ振りをしても、やはり深くまで踏み込めない自分。どんなに兄弟を演じても、表と裏の世界には隔たりがあると。

