この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ一つの一対
第5章 花園の鍵は
「それは、そうでしょう。菖蒲はまだ16歳なんですから、紛れもない未成年ですよ」
「……でも、16歳は、結婚出来る歳だよ?」
思わぬ返事に、菊は心臓が跳ねる。穏やかな空気に潜む色を見ない振りをして、菊は菖蒲の手を取った。
「妙な事で拗ねていないで、早く帰りましょう。今日は何を食べたいですか? 遠慮せずに言って――」
「叔父さん、あたし、逃げないで聞いてって約束したよね?」
菖蒲は掴まれた菊の手を逆に引き、近くにあった更衣室の中に入る。窓もなく、日が落ちて薄暗い部屋は、あらゆる境目を隠していた。
「菖蒲、ここは女子の更衣室でしょう。誰もいないとはいえ、倫理的に僕が出入りするのは……」
「そうやってごまかさないで! ちゃんと、あたしの話を聞いてよ」
菖蒲が涙を滲ませ訴えれば、菊は口をつぐんでしまう。菖蒲はその隙に菊へ抱きつくと、子どもでないと訴えるように唇を重ねた。
「っ、いけません菖蒲! 僕は、あなたの叔父なんですよ」
「知ってるよ、そんなの! でも、あたし叔父さんが好きなの。ずっと好きだったの!」