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天使と悪魔は暁で交わる
第2章 どなた、ですか?
「よかった、大丈夫」
はぁ、と息を吐くと同時にわたしはセリフを紡ぐ。
「じゃあ、頭部検査に回しまーす」
「お願いします、ここ片付けます」
患者さんがストレッチャーに移されて
移動したのを目で追いながら
わたしは使った器械を集め始めた。
「ね、赤坂さん」
「はい、あ、お疲れ様でした」
急なオペで
位置的にドクターの直介(チョクカイ)をしてしまったわたし。
目の前で片付けを手伝ってくれるナースに頭を下げた。
「桜井といいます、宜しく」
「こちらこそ、宜しくお願いします」
また、頭を下げて今度は笑顔もプラスする。
「赤坂さん、凄いのね!オペ室?」
何処から異動してきたのか、ということを
聞いているのだろう。
「いえ、外科専です」
「え!?じゃあ、どこかでオペ室やってた?」
「あ、はい、前のところで……」
「どうりで!」
この大学病院に勤めたのは1年半くらい前か。
それまでは確かに、別の病院でオペ室勤務だった。
だから、オペにも少しは慣れているし
外科でもそれ相応に対処できた。
「髭となかなかタイミング合うナースっていないから
ビックリしちゃった」
そこで初めて笑顔を見せてくれた桜井さんに
思わず聞き返した。
「ひ、髭?」
わたしは首を傾げて彼女を見上げる。