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天使と悪魔は暁で交わる
第2章 どなた、ですか?
新しい職場に慣れるのは大変だ。

夜勤はかなりの確率でハードコア。


ひっきりなしに入るホットライン。

運ばれてくるだけじゃなくて、自力で辿り着く患者も含めて、それは大賑わいだ。


「いいですかー、洋服切っちゃいますよー」
「生食もっと持ってきて!」
「こっちは感覚ありますか?」
「あー、そこで座らない!」
「だれか、外来入ってー」


様々な声が飛び交う中


「ここは、静かだな」


その後直ぐに、じゅっ、という音と
皮膚の焼けるにおいがした。

また、髭、とペアを組んでのオペレーション。

パシ、パシとドクターと前立ちの掌の中に飛び込む器械。

あー、疲れた。
もー、疲れた。

この夜の間に何本直介やらせる気だ。

「すごいね、キミ」


前立ちのドクターが
開いた部分に鉗子をはさんでいく。

「だろ、やりやすくて」


髭が弾むような声を出して笑った。


「これだけ出来れば、沢木先生も文句言わないんじゃないですか?」

「あぁ、だな?」


口ばっか動かしてないで早く受け取ってよ。

指示もされていないガーゼを受けようともせずに前立ちのドクターが首を傾げる。

オレが欲しいのは鉗子なんだよ、と思っているならそれは大きな間違いだ、馬鹿野郎。

とは、絶対言わないが。

「先生、そこ、お願いします」


出血箇所を匂わせて更にグイとガーゼを前面へ押し出した。

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