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天使と悪魔は暁で交わる
第2章 どなた、ですか?


「オペ室空いてる?」
「ご家族に連絡は?」
「待ってください、立ち入り禁止ですから!!」

処置室のカーテンがバサリと開いて
厳つい男子がズカズカと歩いてくる。

「困ります、出てっ、きゃあ!!!」

ズカズカを止めようとしたナースが一人弾き飛ばされた。

「おい!医者はどこだ!」


ストレッチャーの上の血塗れの患者に一度目を向けてから
何故だか、私の方を見たその得たいの知れない男は
その歩みを止めずに傍までやってきた。

「邪魔です、出て行ってください」

目の前の大木を見ようともせず、刃物が突き刺さったその周囲の衣服を切り取る。

あー、こりゃ、裏側までイッテるな。

「医者はどこだっっつってんだよ」

延びてきた手が、私の新しいナース服の襟首を掴んだ。

しかも、ネックで留めてあるボタンがブチ、と小さな音を立てたのだ。

おい、この制服、まだ新しいんですけど。
なにやってんの?


「……邪魔だって言いましたよね」


「医者は」


「研修医くん、呼んでるよ、この人」

大木男のすぐ隣でわたしを助けようともせずに目を点にしている白衣の男。
研修医の前田君に声をかける。

ギロリと目を向けたものの、その手はわたしを掴んだままだった。

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