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天使と悪魔は暁で交わる
第2章 どなた、ですか?
うつ伏せになった大木男の首に膝を押し付けながら
肩関節を後ろに捻り上げる。
「警備まだっ???」
「あ、あ、」
「今すぐっ!」
研修医前田がやっと走り出した。
「何やってんですか、早く今のうちにライン取って!
後、エコーと、AEDと手の空いてるドクターこっちにま」
「賑やかだな」
ストレッチャーの下からこっちに向かう足が見えた。
あ。
黒いサンダル。
濃いブルーの術着。
トイレで如何わしいことをあからさまにシていた奴じゃない。
やっぱり、ここの、救命ドクターだったんだ。
チッ、と舌打ちが出た。
だけど、その音は研修医前田が連れてきた警備二人のバタバタと駆け込んでくる慌ただしさに掻き消される。
……おっそい。
警備も、ドクターも。
それに、スタッフの反応も対応も。
「代わります!」
「離しやがれっ」
やっと、我に返った大木男が急に暴れだした。
警備の手に渡ったんだからもう知ったこっちゃない。
せっかくはめた手袋を外して、また新しい物をはめ直す
もったいないし
マジで、ムカつくし。
「受傷から約30分、到着後、えーと、7分です
サチュレーション96
脈拍、だいぶ落ちました
すみません、立て込んでいて、ライン取ります」
何事も無かったように、立ち上がり
目の前の患者に向かった。