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天使と悪魔は暁で交わる
第2章 どなた、ですか?
青い術着が所々濃紺に染まっていた。
事故オペ執刀、だったんだ。
わたしが夜勤交代をしたのはもう2時間は前だから
詳細までは知らなかったけど
今ドクターが手薄だという事は聞かされていた。
「あ、沢木先生、なら大丈夫か!」
そんな風に言った女性ドクターがこちらに来た踵を直ぐにUターンさせる。
さわき、先生?
エコーを見ながら患者のお腹の上でプローブを丁寧に動かしていくドクターの手元。
大きな手。
このドクターは身体に見合ったスタイルをしている。
濃紺に濡れた胸元にIDカードは付いていなかった。
画面に映る映像は本来ならば白い筈の箇所が
黒く映っている。
「ひど……」
思わず口に出してしまった。
手間取ってる7分の間に出血が溜まってしまったんだ。
これは、腹水ではなく、明らかに出血に間違いないだろう。
早く損傷箇所を見つけて
塞がないと多分……。
わたしは棚から滅菌済みの機械をバラバラと持ち出した。
「ね、今から何するか分かってる?」
そんな時、なんとも緊迫の場面に似合わない落ち着いた声が聞こえて、さわき、と呼ばれたドクターと視線が合った。