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天使と悪魔は暁で交わる
第2章 どなた、ですか?


へぇ。
ナイスな手捌き、ならぬ、メス捌きするじゃない。

オペ室にいた頃。
何千?くらいのオペに立ち合った。

その中でもかなりの腕前なんじゃない?

「腸管損傷、あると思う?前田先生」

緊迫した中でも研修医指導を忘れないなんて
親切なドクターだこと。

「あ、あっと、……あ、ありません」

たぶん。
と、小さな声で呟いた研修医前田。

「たぶんは、余計

そう、ナイフ抜去するよ」

ふーん、手際もいい事。
あー、速いわ。

別にレベルを定めている訳ではないんだ。
ただ、患者の事を考えればさ、速いにこした事はない訳だ。

髭といい獣男といい
かなりの上玉揃ってるじゃないの、流石救命の老舗。

「あー、けっこう太いの刺さってたねぇ
痛いだろこれじゃ」

獣男が言うとどうも緊張感に、欠けるなぁ

お腹の中を覗きながら、ドクターの手元に器械を飛ばす。
しかし、内臓損傷の前立ちに研修医って…
獣男、キモ座ってるんだ。

この余裕の運びはハッタリじゃないんだね。


オペが順調に進んでいく中

ガーゼを渡した研修医前田がそれを受け取ろうとしない。

まただ。
こいつら。

獣男が肝臓の縫合をする傍らの事だった。

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