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天使と悪魔は暁で交わる
第2章 どなた、ですか?
ここ、外科専なんですけど。
信頼できる同僚なんてほんとに一握り。
「じゃ、今日も1日元気に、ミスのないように」
主任がパタンとファイルを閉じて
わたし達をクルリ、見回した。
「赤坂さん、ちょっといいかしら」
「は?わたし、ですか?」
ちょうどのタイミングを見計らったかのように登場した外科看護師長、三宅さん。
三宅師長が珍しくわたしを呼ぶ。
こんな事は初めてだった。
「なんでしょうか」
「うん、こっちこっち」
先輩ナースの視線がチラ、チラ、と私に突き刺さった。
もう、あんまり目立つような事はできれば避けたい。
ナースステーションの隣には
患者さん家族用にカンファレンス室が設けられている。
ここでオペの手順を説明したり
予後の話だったり、ようはまぁ、小さな会議室。
三宅師長がわたしをそこへ連れて入った。
「座って?」
「はい」
着席したわたしが顔を上げたと同時に告げられたのは
「赤坂さん、異動です」
「は?」
にこり、と笑うと目尻の皺が深くなる。
師長はもう高校生と大学生のお子さんがいるような
人生の先輩だ。
「急で申し訳ないんだけどね?
救命でナースが二人辞めてしまったの
募集をかけていたんじゃ間に合わないのよ」
激務への誘いだった。