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彼は「安産」だったらしい。
第1章 Maonaサンたら大胆なのね★
「何ですか、それ」
「Maonaを撮ったものだ」
「あぁ、Maonaさん……」
 僕も彼をよく知っているし尊敬してる。
 同じ事務所所属だけど、向こうはアーティストだ。ギタリストのKyoさんとユニットを組んで、カッコイイ曲をたくさん出している。
「新しいPVですか?」
 僕が訊くと、社長は首を振った。
「出産シーンだよ」
「えっ」
 そんなものを撮っていたなんて、初めて知った。
 彼が僕と同じアークルの者で、人間のKyoさんと愛し合っていたのは知っていたし、出産した話も聞いたけど。
「恥ずかしいからあまり見せるなって言われたんだがね、オマエにはぜひ見てほしいとも言ってたよ。参考になるだろうし」
「はぁ……」
 同じ種族で、同事務所所属とはいえ、ずいぶん大胆だなぁ。
 僕は出産なんて、フユキ以外には見られたくないけど……。
「彼は根っからのアーティストだからね。この映像も、本当に美しいよ。
 ぜひしっかり見て、儀式に臨んでほしい」
 社長までそんなに言うのなら、勇気を出してみてみようかな。
 成人した後のMaonaさんは、「安産だった」と言ってたし。
 もちろん、アークルであることはほとんどの人にはないしょだから、出産も極秘だけど。
 ちなみに僕らは、産んだ子は育てずに遺棄するのが常なので、Maonaさんもこれまでと変わりなく過ごしている。
「じゃあ、見たらまた感想を聞かせてくれよ」
 そう言い残して、忙しい社長は次の仕事に向かった。
 僕はというと、すべきこともあまりないので、さっそく、部屋の鍵をかけ、DVDを見てみることにする。
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