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再愛
第6章 再愛
もう、壊れてしまった夫婦が一緒に居る意味はなかった。

晃司を解放してあげなきゃ‥‥

晃司、手先が器用なあなたが好きだった。
実家で飼っていた、犬のブーケの小屋を作ったのは、あなた。
ブーケは素敵なお家に大喜びだった。


家中の家電製品の寿命は、あなたが長持ちさせたわ。

美樹が小さな頃、あなたをお医者さんだと誤解していたのよ。

それでもあなたは嬉しそうに、『パパは機械のお医者さんなんだよ。物にも命がある。だから、美樹は、何でも大事にする子になってね』

美樹に優しく諭した。
私は不器用だから、器用なあなたを尊敬していたのよ。

あなたは美樹のいいパパだった。

美樹のピアノの発表会には、必ずビデオを持って、撮っていた。

『美樹にはいろんな可能性があるね。ピアニストにだってなれるさ』

一人娘の美樹を溺愛していた。
美樹を誰よりも褒めて自信をつけさせていた。

本来のあなたは、優しく、穏やかな人。

言い訳じゃないけど、私と離婚したら、美樹からパパを奪ってしまうから、決断が鈍ってしまっていたのよ。

私とは愛のない夫婦であっても、美樹からあなたを奪う権利はないって‥

あの日、あなたがお姉ちゃんの事を告白した時、
あなたは、お姉ちゃんの元に行くつもりだった?

全てを無にしてでも‥‥
選んだ?


私は、そんなあなたに罰を与えた。
愛のない私と10年の月日を過ごす事。

苦しかったね。
お互い。

もう、心が離れて、交わる事のない方向に歩いていたのに‥‥

私達は、違う道を歩む北風の中の旅人。

太陽の光の温かさなんてなかった。

今なら、哀しいくらいあなたの気持ち‥‥分かるよ。
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