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第6章 再愛

僅かばかりの女のプライドが、私にもある。

終わりを告げられない、優しさを履き違えた男を安心させ、元の場所に戻してあげる優しさも私にはある。

『さよなら』を言ってあげる。

私は、哲朗さんに最期のメールを打つ。


そちらもいろいろと忙しいみたいだから、
もう、気にして頂かなくて大丈夫です。
返信も無理しないで結構ですから。


送信


さよなら。
大好きだったあなた。
もう、そのあなたは居ない。


諦めもついたし、悪足搔きもしないわ。
そこまで、私を堕とす程の男じゃないもの‥
最期に狡くなる男に用はない。

不倫って、あなただけが狡いわけじゃないわ。
勿論、私も狡い。
狡さから始まる恋愛の終止符は、その狡さの中でも、真剣に心を向けた私が、ケジメをつける。

あなたの奥さんに悪い事をしたとか、
微塵も思わない。

どうしてだと思う？

あなたに愛されながらも、あなたをしっかりと繋いでおけない女から、ほんの一時奪うくらい、罪だとも思わないの。

愛を探していた女が、ほんの一時の幻を見てもいいじゃない。

それでも、子供には罪がなかったわね。

私の娘と、あなたの息子さんには、悪い事をしたわ。
大人の事情に、子供は関係ないもの。

謝るのなら、そんな大人の身勝手に犠牲になった、子供達に心から詫びます。

本当にごめんなさい。

あなた達に私は誓います。

許して欲しいなどと、都合の良い事は言いません。
罪滅ぼしにもならないけど、金輪際、不倫は辞めます。

もう、人のものは欲しがりません。

やってみなきゃ、分からなかった愚かさが身に沁みました。

ごめんなさい。

告げられない言葉はここに残します。