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再愛
第3章 君を知る
すぅーと自然に涙が頬を伝う。

樹良が心配そうに俺を見た。

「あっ、ごめん」
急いで、スーツの上着のポケットからハンカチを取り出し、拭う。

後から後から涙が溢れて止まらない。
格好悪いなぁ…

その時、頭の中で、蛍の声が聞こえたような気がした。

『鬼の目にも涙?
……会いたかった』

涙は止まるところか、
嗚咽まで漏らしそうだ。
どうにかしてくれ!


蛍…


目の前の樹良が、蛍そっくりな笑顔で言うんだ。

「杉下さん、大人って、大変ね。
それとも…男が大変なのかな?
泣きたい時に、大声で泣けない。
母は幸せね。
自分の死を哀しんでくれる男に出会えたんだから」


暫く、俺は下を向いたままだった。

「破天荒な母でしたよ。
一生懸命、愛そうとしたり、愛されたいと願ったり。
でも、不器用にしか愛を探せなかった。
最期まで情熱を心に仕舞い込んで、四苦八苦しながらも、幸せを諦めずに生きた女です」
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