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アホはお前じゃ 
第3章  
 チッカチッカと赤く点滅する表札のノブを開け室内に足を踏み入れた大基のあとに続いて綾香ちゃんも中に入り、薄暗くて煙草くさい安価なラブホテル特有の趣味の悪い古びた内装をぐるりを見渡したあとも、綾香ちゃんは強張った顔で笑っていた。


 違います?


「どないしたん?」


 大基が尋ねると、綾香ちゃんはその表情のまま首を左右にゆっくり振ったそうですね。
 そして、こう言った。


「・・・全然すごくない」


 綾香ちゃんはベッドに腰を下ろした大基から少しはなれた壁際に背をつけ、険しい顔をしながら、そんなことを言うと。



「親戚らはもっと立派やから。会社経営なんか貧乏人のやることやって。
 いつもいじめられて肩身狭くて。やのに私までいきなり学校辞めちゃったから。
 親戚みんなに一族の恥やって言われて。はよ仕事見つけて18歳になったらウチ出てけって・・・もう二度と関わらんといてくれって・・・・」


 堰を切ったように涙を溢し、声を上げて泣き出した。
 そうですね?


 初対面のオッサンに「誰にも話を聞かれたくない」と本末転倒とも思える危険な条件を突き付けてまで大基に縋ろうとしたのは、杵渕先生との出来事だけじゃなく、その他もろもろの事情もあったんですね。


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