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第30章 意志 -祐樹side-

大きく息を吐いて、理香は事務所のドアを開けた。
定時前だからか事務所の中には数人の人がいて、仕事をしていた。
たぶん、これが理香にとっての日常の風景。


「おかえりー！」
真っ先に俺たちに気づいて駆け寄って来たのは、理香より少し年上の女性だった。

「…ただいま、です」
ぎこちない笑顔を浮かべたまま、理香はその女性に抱き締められていた。

「急に2週間も出張って聞いてびっくりしたよ。
もしかして、北宮くん？北宮くんと一緒に出張って役得だね」

彼女の発言から、出張に行くことになった経緯や事情はバレていないことがわかり、静かに息を吐く。
それは理香も同じだったみたいで、その表情が少し和らぐ。

芦田社長や理香の先輩たちも話の輪に加わり、おみやげを渡しながら、出張中にあったことを話ている。