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面影
第7章 時計
麗を抱き寄せると、
コツンと何かが胸のあたりに
当たった。
『俺の…携帯?』
麗が起きてしまわないように、
そっと麗から取り上げる。
中身を確認すると、やはり
'”あの人”は消されていた。
麗が俺に隠れて、
ずっとこういうことを
続けていることは知っていた。
でも、どれだけ麗が
あの存在を俺から必死に遠ざけようと
足掻いても、俺の弱さのせいで
麗が必死に離した距離を自ら
簡単にゼロにしてしまう。
結局、俺は
あの人にも麗にも依存し、
自分にとっていいように使い、
生温い中で生きている。
携帯のように、
ボタン一つで存在をすっきり
消すことが出来たなら、
どんな今があったのだろう。