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金木犀
第2章 出会い
あたしがもしお兄ちゃんと他人だとして
勧められても絶対付き合わないね、
かっこいいけど、束縛酷そうだもん。
先輩みたいな、楽しくて穏やかな人がいいな。
「…」
先輩…か。
「好きだよ」
先輩のあの時の声がまた頭に響いて、
慌てて頭を振った。
…忘れなきゃ。
先輩はあたしがあの声を聞いてた事を知らない…
変に意識したら、怪しまれちゃう。
「…っ」
辛い…けど、忘れないと。
潤んだ涙が零れないように拭って、
近道して帰ろうといつもと違う道の方向へ歩き出す。
いつも帰るような夕方や夕飯時とは違い、
今は深夜…もう22時を少し超えちゃってる。
人気は全くなく、ひっそりとして静かな道。
でも、廃工場通って公園抜けるだけだし。
大丈夫大丈夫。
自分に言い聞かせて歩き出し、ふと足を止めた。
…せめてお兄ちゃんに連絡入れておこう。
そう思ってスマホに視線を落としたあたしの耳に、
複数の足音が聞こえた。
「っ…」
え…?
体に血の気が引く。
ツン、とタバコのにおいが鼻をくすぐり、
あたしは思わず振り向いた。
「…っ!」
数メートル先、微かな街頭の下…
にやりと笑う、若い男の人達。
「よお」
…あ、に、…逃げなきゃ。