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金木犀
第2章 出会い
「…別に。俺松田さんが来る前からここにいたから」
…え!?そうなの!?
乱された服装を何とか整え、
椎名くんを驚いて見上げた。
「…」
こんな所に、1人で…?
疑問に思うあたしに
「何もなくてよかったな」
そう言って小さく笑う椎名くんは、
少し離れた所にある鞄を取って、
汚れを払ってあたしに渡してくれる。
「中身とる暇もなさそうだったから、
大丈夫だと思うけど…確認してみたら」
「ありがとう…」
椎名くんって、実は親切なんだな。
なんて、少し失礼な事を思いながら鞄を受け取り、
財布やスマホがとられてないか探す。
よかった…大丈夫だ。
…、大丈夫、だ…
あたしの目にじわりと涙が浮かぶ。
「あれっ…?なっ、何で…っ」
後から後から溢れる涙は、
止まる事を知らないのか次々と溢れて地面を濡らす。
…怖い。
怖かった…
男の人との力の差を嫌でも実感させられた…
あんなに、振り解けないものなんだ。
あんなに、痛くて怖くて苦しくて…
その時。
ぽん、と頭に載った大きな手。
見上げると、椎名くんがあたしの頭に手を置き、
向こうを向いていて。