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金木犀
第1章 prologue
先輩の好きなところを言ったら、きりがないんだ。
先輩…拓也先輩は、2つ上の3年生で、
あたしが所属する吹奏楽部の部長。
トランペット…パートも同じ。
入部する前から、先輩はとても優しくて。
体験入部で、先輩目当てで来る人も多い中
あたしの本気をすぐに見抜いて
付きっきりで優しく教えてくれて。
部活の後残って練習してるあたしに付き合ってくれて
暗いからって家まで送ってくれた事もあった。
好きになるなっていうほうが無理だった。
それくらい先輩とはいろんなことがあって…
だから、この気持ちを伝えようって。
好きって言おうって。
前聞いた時、彼女いないって言ってたし、
彼女になりたかった。
先輩の特別になりたくて。
あの笑顔を、あたしにだけ見せてほしくて。
告白するタイミングを狙ってた…だけど。
夏休みを目前に控えたある日…
部活を終えて、帰る直前。
部室に楽譜を忘れてきたことに気付いたあたし。
次の日までに覚えていかなきゃいけないから
取りに戻ろうと、あたしは部室へ急いでいた。
そして…扉を開ける寸前。
中から聞こえた声に、ドアノブを捻る手が止まった。
「ぁっ…ん、拓也…っ」
女の人の甘ったるい声。
更に…
「は…っ、莉奈…」
あたしの、大好きな声。