この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
金木犀
第6章 それぞれの思い
鼻の奥がツンとして、目に涙が滲んだ。
泣くな。
俺に泣く資格なんてない。
愛歩。
愛歩っ…
お前に会いたい。
会いたくて堪らない…
会って、抱き締めて、笑顔を見たい。
俺が愛歩を笑顔にしたい…
溢れる涙を懸命に堪え、愛歩の兄貴を見つめる。
「愛歩は俺の、生きる希望です。
俺、今までだらしない生き方してきてたけど。
愛歩と出会って、愛歩を知って、
愛歩しか見えなくなった。
どうしようもなく、愛歩が好きなんです」
「…あのさあ。さっきから愛歩が何とかこうとか
散々言ってるけどさあ。
お前の気持ち、分かるよ。分かるけどさぁ…
口先だけなら何でも言える訳。何か行動起こしてる?
普通さ、本気なら口より行動が先に出る筈だけど。
その思いが本気だって分かる位の行動を
お前は起こしたのかよ?」
「…っ、環境を…変えました」
「…はあ?」
「愛歩の噂、学校で持ちきりでした。
襲ったやつらが退学になったのも騒がれて、
愛歩を罵るやつも出てきました。
そんな環境に、もし愛歩が戻って来たら何て思うか…
愛歩が、いつ戻って来てもいいように。
全学年全クラスを回って説明しました。
…一時期、結衣以外の友人全てをなくしました」