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金木犀
第1章 prologue





結衣の親よりも一緒にいたんじゃねぇかってくらい
毎日一緒に過ごしてた。


大好きなのに…可愛くて可愛くてたまらないのに。


素直に気持ちを伝えられない。


いつも結衣に向かって俺の口から飛び出すのは、
「ブス」とか「デブ」とか…正反対の言葉ばかり。


そんな可愛い笑顔振りまくのは俺の前だけにしろ。


そんなに痩せるな、十分細いのに。


お前が他の男と話してるとイライラすんだよ、
何話してんのか知らねぇけど。


そう、思ってるのに…とっさに口から出るのは、
結衣が傷付くような言葉達。


だから…かな。


結衣がその男にとられたのは。


「優しくて大事にしてくれる人」


らしいそいつと結衣が付き合った時、
周りのやつはものすごく驚いて。


「桜井って航と付き合うもんだと思ってた」


「つか、椎名結衣だと思ってた」


…そうだな、俺もそう思ってた。


だけど…そう言われた結衣の口から出たのは。


「違うよぉ、航はただの幼なじみ!
付き合うとか考えられないよ〜」


俺をどん底に突き落とす言葉。


極めつけに、男の意見も聞きたいとか言って
俺に恋愛相談してくるし。


…ほとんどノロケだけども。


なぁ、結衣。


俺…辛くて堪んねぇよ。


毎日どんな気持ちでお前の傍にいるか知ってるか?


人の悩み聞いてやってる時はあんなに鋭いのに
何で自分のことには鈍感なわけ?


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