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金木犀
第1章 prologue
…無理矢理奪えばいい?
弱みでも握って、俺から離れられないようにしたら、
お前は俺のものになんのかな。
…無理矢理、か。
少し目線を落として、柔らかそうな髪を見つめる。
細い腕を掴んで、早足で歩き出した。
「あっ!ちょっ…航!?ねっ…ねぇどこ行くのっ」
決まってんだろラブホだよ。
小走りで俺についてきてた結衣。
街から外れた道に出て、歩く速さを緩め…
力なく、結衣の腕を離した。
犯して写真撮ってやろうと思ったけど…やーめた。
…結衣に嫌われんのは耐えられない。
「…航?どうしたの…?」
「…」
…どう、したんだろうな。
「…何でもねぇよ」
もともと豊かではない表情筋を無理矢理上げて、
結衣に微笑みかけた。
「変な航ーっ」
街の道に戻る俺についてくる結衣。
「ね、せっかくここまで来たんだし
何か食べて帰ろうよーっ」
「…そうだな」
「やった!あたしパスタ食べたーい」
「はいはい」
心を支配する、やるせない気持ち。
ぐちゃぐちゃになった心を鎮めるように
深く息を吐き、結衣の隣を歩いた。