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はじめてをきみに
第3章 愛はやさしくない

「ヒロくーん、起きて!」
「わっ」
耳元で叫ばれて目が覚めた。目の前には、身支度を済ませた茉由がフライパンを持って立っている。
まぶしいから、今日はよく晴れているみたいだ。のそりと上半身を起こすと、掛布団が素肌を滑り落ちる。
「おはよう」
「おはよう……」
「キッチン借りてもいーい? お腹減っちゃった。ヒロくんの朝ごはんも作ってあげるね。あ、お風呂借りたよ~」
「ああ、うん……」
答えながら、ん、えっと、そうか。
茉由だ。
と、まず思った。鼻歌を歌いつつ、キッチンで目玉焼きを作る後ろ姿。普段通りの、明るい茉由だ。
つづいて、昨夜のあれやこれやが走馬灯のように頭の中をかすめていって、今度は顔からみるみる血の気が引いていった。
そうだ、俺昨日、なんか理性的なものが弾け飛んで、茉由にとんでもないことを言ったりしたりしたような気がする。
それで、眠りに落ちる前、目が覚めたら真っ先に茉由に謝ろうって、それで、できればこれからも付き合っていてほしいって言おうって思って、最悪フラれる覚悟も……。
「ふんふふーん、あ、ヒロくん目玉焼きふたつ食べるー?」
あれ、でも、なんか、平和だな。

