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はじめてをきみに
第1章 きみの名前を呼ぶ

「あ、ごめん、ドライヤー出すの忘れてたね。使う?」
「ああ、はい。ありがとうございます」
正直もうほとんど乾いてるけど、何か他のことをしてないと今にも先輩に抱き付いて、ほんのり桜色をしたうなじにキスをしてしまいそうだった。
手渡されたドライヤーを受け取って、髪をわしゃわしゃしながら熱風を当てる。20秒で乾いてしまった。
電源をオフにすると、化粧水か何かを顔に付けていた先輩がくるりと振り向く。
「もう乾いたの?」
「はい」
「そっか、髪短いもんね。いいなあ、私、髪伸ばしちゃったからけっこうかかるんだよね」
「そういえば先輩、高校生のころはずっとショートカットでしたね」
「うん。髪なんか長くても邪魔なだけだと思ってたから。でも伸ばした方が女の子らしくて可愛くなるよって友達に言われて」
「うん、可愛い」
「え」
「先輩、長いの似合ってますよ。茶髪も。可愛い」
「…………っ」
真っ赤になって、うつむく先輩。
……あー、もう、くそ。
可愛い。もう限界。
「先輩、来て」
「え?」
俺はドライヤーを持ったままベッドに腰かけて、自分の脚のあいだをポンポンと叩いた。
「髪、乾かしてあげます」

