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はじめてをきみに
第1章 きみの名前を呼ぶ

おずおずと近づいてきて、俺の脚のあいだにちょこん、と座った先輩の髪を梳く。
さらさらした柔らかい髪。ドライヤーで風を当てると、ふわ、と舞って甘い匂いを振りまく。
これはシャンプーの匂いなんだろうか。それとも、先輩の匂いなんだろうか。
先輩は、いつも甘い匂いがする。
今すぐ押し倒してしまいたいのをぐっと堪えて、根気強く髪を乾かした。なるほど、たしかに時間がかかる。
やっと乾いてドライヤーをとめると、先輩が俺にしなだれかかってきた。
えっ!? と思って顔をのぞき込んだら、
「人に髪の毛乾かしてもらうのって、きもちいいね」
と言ってうとうとしている。
先輩の体に後ろからそっと手を回したら、腕に、手のひらに、心地よい重みや、あたたかさや、柔らかさが伝わってきて、俺の中のひとつめの砦が音を立てて崩れ落ちた。

