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はじめてをきみに
第1章 きみの名前を呼ぶ

「先輩!」
俺は、こっちへ駆けてくる先輩の倍の速さで駆けて、彼女との距離を縮めた。
そして、相変わらず華奢な先輩の体を思いっきり抱きしめた。
1年前は黒くて短かった髪が、肩まで伸びて茶色に染まっていた。
鼻をうずめると、甘いシャンプーの匂いがする。
「翔太、はなして。見られてるから」
その甘い匂いを肺いっぱいにかぎこんでいたら、くぐもった先輩の声が胸元から聞こえた。
ハッと周りを見ると、通りすがりにちらちらと向けられる視線が、ちくちく俺たちに刺さる。
「ごめん、つい」
先輩の体を解放してそう言ったら、顔を真っ赤にした彼女が、「もう」と言って少し笑った。

